JIAの保育


2025年2月 JIA園長 江頭知華子

JIAは今年で設立から9年目を迎えます。開園当初はグルガオンで唯一の日系インターナショナル幼稚園として、「日本」という安心感を求めた保護者の方々から大きな関心を寄せていただき、たくさんのお子様をお預かりしてきました。その後間もなく「日本語サポート」や「日本のカリキュラム」を取り入れた幼稚園や学校ができ始め、それにつれて規模の大きいインターナショナルスクールも日本人コミュニティーを対象とした広告媒体に日本語で案内を出すようになり、以前よりも現地のスクールにアプローチしやすくなりました。グルガオン在住の日本人のお子様に幼稚園の選択肢が増えたことは歓迎すべきことですが、候補となる幼稚園の中からお子様が1日を過ごす大切な場所を選び決めるまでの不安は大きいのではないでしょうか。園の設備、保育時間、スクールバスや給食の有無などは長所短所を容易に比較できますが、保育の質を見比べることはなかなかできません。ここではJIAの保育の特徴をなるべく具体的に説明しますので、幼稚園を検討する際の参考にしていただければ幸いです。興味をお持ちくださった場合は是非見学にいらしてください。

少人数制

園児の数は全体で約10名(2024年度)、プレクラスから年少・年中・年長クラスの子どもたちが一緒に園生活を送っています。保育と教育にあたるのは副園長の加島愛先生。一人の幼児教育専門家が子どもたち一人一人に寄り添ってそれぞれの成長を支えていくためには、全体の園児数を抑える必要があり、最大で12名から15名を定員としてます。年齢の低い園児が多くなる場合は定員数を少なめに設定し、新規入園の受け入れを調節します。募集人数を明記していないのはこのためです。愛先生と共に子どもたちの毎日を支えるのはインド人のシュエタ先生。手先が器用で工作や少し凝ったサイエンスの実験を得意とし、子どもたちと遊ぶのが大好きな先生です。また、必要に応じて3人のヘルパーさんたちがクラスのお手伝いに入っています。

少人数制の背景

JIAは設立当初から少人数制だったわけではありません。こじんまりとした幼稚園ではありましたが、25名から35名の園児を年齢別クラスに分け、インド人の先生がクラス担任を受け持っていました。しかし、幼稚園の運営と保育は次のような問題と常に隣り合わせでした。(1)インドには幼児教育に対して深い知識を持つ教員が極度に少ないということ、(2)教育業界であっても短期間で転職する人材が多く、長期間勤務を継続できる先生が少ないという問題です。(1)については、教員資格・経験に関わらずJIA内で研修を徹底、(2)については、欠員が出る度に副園長がアシスタントの先生と共にクラスを受け持ち、新規採用の先生が研修を経てクラスに立つことができるようになるまでの保育を担うという形で対応していました。他所では、保育内容をマニュアル化することで教員の入れ替わりが頻繁に起こっても新任の先生がすぐに仕事を開始できるようにしているところもあるようです。JIAが教員採用を行う際、採用試験の一環としてレッスンプラン(教案)の作成を求めることがあるのですが、中には「レッスンプランを書いたことがない」という先生も多く、人材の問題、日本の教育界との違いを重く感じました。そうした経緯から、より安定的に質の良い保育を行うため、JIAは現在の少人数制に移行しました。

カリキュラム

日本の幼児教育に海外の幼稚園の長所を取り入れ、心身の成長、認知機能や言語の発達、社会性の発達などを総合的に支えていきます。子どもたちの豊かな成長と学びは「遊び」が基本です。遊びながら体が強くなり、手先が器用になり、友だちや信頼のできる大人と関わり合い、楽しい時間を過ごすことで心が豊かに成長します。語彙力や言語運用能力も幼稚園で友だちや先生の話を聞いたり、自分から話したりすることで伸びていきます。また、子どもたちは幼稚園で初めて社会生活の基本を学ぶことになります。日常生活で大切な決まり事を始め、みんなが気持ちよく過ごせるようなマナーや思いやり、礼儀など、日本人としての観点から子どもたちにしっかりと教えていきます。

良い習慣を身につけること

脱いだ靴を綺麗に揃えること、使ったものは整えてから元にあった場所に戻すこと、ゴミが落ちていたら拾って捨てること、席を立つ際にテーブルから後ろに引いた椅子をちゃんと戻すこと、何かを人に手渡しする時の向きは… 細々したことを挙げるときりがありませんが、これらはただの決まり事ではありません。整った環境の大切さ、自分でやることの大切さ、他人を思いやることなど、「どうしてこうするのか」という理由や行為の意味を子どもたちにしっかりと伝えてあげることが大切です。このような日常の所作、習慣は日々の積み重ねです。できた時には「よくできたね!」としっかりと褒め、小さな成功体験を重ねることで良い習慣が定着するように働きかけます。自立を促す生活習慣と思いやりのマナーを身につけることで自分に自信を持ち、他人を思いやることができる人に育ってほしいと願っています。ここは現地の幼稚園と大きく違う点でもあります。

習慣の違い

多くのインドの幼稚園では、日本の子どもたちが幼いうちから学ぶ生活習慣を指導できる先生がいません。それは現地の幼稚園の良し悪しということではなく、文化や習慣の違いによるところが大きいと考えられます。インドでは自宅にありとあらゆる家事・雑用、子どもの世話をしてくれるお手伝いさんがいるように、幼稚園や学校にも「ディディ(ヘルパー)」がいます。片付けは基本的に彼女らの仕事で、先生はディディを頼りにしています。机の上の紙屑や床に落としたゴミを処理してくれるのもディディや「お掃除の人」の仕事です。小さな子どもたちが靴や上着の着脱する際、「自分でやってみる?」とチャレンジを促すことは少なく、ディディが手取り足取り世話を焼いてくれます。また、日本の幼稚園や学校では子どもたちが先生のお手伝いとして何かを運ぶことがありますが、インドではありえない光景です。所作の面でも違いは大きいです。本や文房具など何かを手渡しする際、差し出し方に注意を払う人は少ないですし、インドに限らずアメリカでも手渡す物の向きを気にすることはあまりありません。JIAのインド人の先生に関しては、最初に研修を行うのはもちろんですが、その後も事ある毎にインドの習慣を尊重した上で「JIAの中ではこうしてほしい」という指導、お願いをしています。気持ちよく受け入れられることもあれば、当然ながら文化の違いにより難しい習慣もあります。

バイリンガル保育

園内では日本語と英語の二言語を使っています。副園長は日本語で、インド人の先生は英語で保育を行います。インド人の先生がクラスアクティビティーを進める際、副園長が必要に応じて子どもたちに声掛けをして理解を促したり、大切な注意事項や安全に関わることなどであれば日本語で再確認します。インドに来て初めて英語に触れるという園児が大半ですので、子どもたちがなるべく不安を感じないようにし、少し勇気を出して英語に挑戦してみようと思える環境作りに努めています。基本的には母語で自分を表現できることを優先しており、英語の習得度を細かく計ることはしません。子どもたちが「楽しい」と感じられるやり方でアルファベットの読み書きを練習したり、ワークシートを取り入れたりしています。年長クラスの園児は卒園式で英語のスピーチができるように時間をかけて練習していきます。また、英語に加えて現地の言葉であるヒンディー語にも親しみが持てるよう、サークルタイムではヒンディー語の歌や数え方、曜日の言い方なども練習しています。英語よりもヒンディー語を習う方が楽しいという園児もいて、その覚えるスピードに驚くことがあります。

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JIAは子どもたちが成長していく環境、成長のプロセスに大きくコミットする幼稚園です。先生が園児一人一人と向き合い、子どもたちの表情や仕草、何気なく発する言葉からも心の動きや成長を読み取って日々の保育に活かしています。決して過保護的にではなく、あたたかく支え、時にはしっかりと導いてあげられるように園児と関わっています。

幼稚園は子どもたちにとって初めて集団生活を送る場所です。様々なことをスポンジのように吸収する成長期を過ごす場所なので、その環境やそこで受ける刺激は子どもたちの成長に大きく影響を与えます。このように言うと幼稚園を決める際の保護者の方の不安が大きくなってしまうかもしれませんが、どうか一旦深呼吸を!

人数が多く賑やかなクラスが合う子もいれば、人数の少ない方が安心する子もいます。英語という慣れない言語環境が苦にならない子もいれば、不安で心を閉ざしてしまう子もいます。判断が難しい場合はご相談ください。お子様の性格やご家庭の教育方針に合う場所で、お子様が笑顔いっぱいで幼稚園生活を送れますよう応援しております。