英語の絵本(3)

2020年8月21日

コロナ禍の夏休み、皆さんはどう過ごされましたか?旅行などできない状況でしたから、我が家ではスポーツや読書を楽しんでいました。「バケーションがない分、好きなだけ本を買ってもいいよ!」と言うと喜んで本を買い込む長女と見向きもしない長男、本に対してはかなり温度差がありますが(同じように小さい時から絵本を読み聞かせてきたのですが…)、おかげで子どもたちと本に向き合う時間を普段以上にとることができました。今月も紹介したい本が数冊あったのですが、迷った末、「Mixed – A Colorful Story」「Happy」の2冊を選びました。

子どもたちのための絵本の紹介に重い話は避けたいのですが、この絵本を手にとるきっかけとなったことを少しお話しますね。皆さんは今年5月、アメリカで起きた黒人男性の死亡事件についてニュースでお聞きになったでしょうか。アメリカでは、今も根強く残る人種差別問題を子どもたちにどう伝えていくべきなのか、事件以後、これまでになく議論が重ねられるようになりました。そして、そのような社会情勢が今の絵本コーナーにも反映されており、夏になって児童書・絵本コーナーで目につくようになったのは、いわゆる「マイノリティー」の子どもが主人公の本の多さです(写真参照)。「他人に対して優しくあること」や「自分はかけがいのない一人の人間なんだ」ということを訴える本も多いです。JIAの子どもたちには少し紹介しにくいものが多いなと思いながら本を見ていたのですが、その中に、白地に生える原色の「まる」が可愛い表紙の絵本を見つけました!表紙に裏切られることなく、非常にシンプルに子どもたちの心にも届くお話が描かれてます。受容や共生がテーマですが、他との違いに優劣をつけることのナンセンスさ、「違っていていい、違っているからいい」ということを子どもたちなりに汲み取れるような絵本だと思います。ちなみに、この本が出版されたのは2018年ですが、アメリカでは今だからこそ改めてそのメッセージの大切さに気づかされた人が多いのではないかと思います。もちろん、日本であろうと、インドであろうと、どんな社会であってもいつの時代であっても、Mixedは「人として大切なこと」が描かれているので、幼稚園にも置いておきたい1冊です。

そして、もう一冊は黒地に描かれた魚の絵がとても印象的な「Happy」です。つい先日のオンラインクラスで子どもたちが作った魚たちがあまりにも可愛くて頭を離れず、「魚」と言えば…と、連想ゲーム的な選択でしたが、みんなの大好きな「The Rainbow Fish(にじいろのさかな)」や「Swimmy(スイミー)」と同様に、素敵なお魚たちが登場します。ただ、ストーリーはなく、「気持ち」を表す20種類の言葉がそれぞれ一匹の魚の絵に表現されています。絵を見ながら英語の言葉に親しみ、親子で「気持ち」について会話を膨らませてみるといいかもしれません。

実はこの2冊、日本語版もありますので、「英語」よりも内容が気になる場合はもちろん日本語でも!英語や絵本翻訳にご興味のある方は日英2冊を比べてみるのもいいですね。(私は好きな絵本が日英の両言語で出版されている場合は2冊買って読み比べるのが好きです。翻訳家の方ってすごいなと感動することも多く、勉強になります!)

  1. “Mixed – A colorful story” by Arree Chung

賑やかなのが取り柄の「赤」、明るいのが取り柄の「黄」、クールが取り柄の「青」が暮らす街。みんな仲良く一緒に暮らしていたのですが、ある日突然、「赤」が「一番偉いのは赤」と言い出し…!「黄」たちは「一番明るい私たちが偉いんだ」と反論、クールな「青」たちは完全に無視。対立が深まるにつれ、それぞれが色別に別れて暮らすようになります。ところがある日、浮かない顔をした「青くん」と「黄色ちゃん」が出逢います。「黄色ちゃんと一緒にいるとすごくハッピーになるよ!」「青くんと一緒にいると、すごく落ち着く」。二人は離れられない仲(Yellow and Blue become inceparable.)になり、「違う色とは付き合うな!」という周りの反対を押し切って一緒になることに。そして「緑」が誕生します。「緑」は、黄色のように明るく、青のように落ち着きのある子で、周りからもとても可愛がられます。そうするうちに、「青と黄」に続いて、他の色同士が次第に混ざっていくようになります。街はどんどんカラフルになり・・・

スライドの写真ですが、全ページ掲載でご紹介することはできませんので、ご了承ください。赤と黄色の言い合いのシーンは、幼児や小学生にとって、日常の「あるある」ではないでしょうか!?ちなみに、こちらが日本語版です。

2. “Happy” by Mies Van Hout

上にも書きましたが、ストーリーがあるのではなく、一ページに一語、「気持ち」を表す言葉が書いてあり、魚の色や表情がとても面白いです!20種類の言葉というと、かなり多いような気がしますが、皆さんはどんな言葉が浮かびますか???英語の単語に親しむのはもちろんですが、「どんな時にこんな風に感じるかな?」「Sad, Content, Bored, Nervous….. って、どんな顔になると思う?」など、お子様とのコミュニケーションを楽しむきっかけになればもっといいと思います。海外の幼稚園では、活動でEmotionsをテーマにする時にこの絵本を使うこともありようです。

本のページをなるべくたくさんご紹介したいなと思っていたところ、Youtubeにこの絵本の読み聞かせ動画がありましたので、リンクをつけておきます。ご参考にどうぞ!

完全に余談ですが、各国語版の本の題名に違いがあり、面白いなと感じました。英語版の「Happy」に対して、日本語版は「どんなきもち?」です。気になったので、他国版を見てみたのですが、作者のミース・ヴァン・ハウトさんはオランダの方で、オランダ語版では英語のHappyに当たる言葉の「vrolijk」でした。スペイン語版も同様です。ドイツ語やフランス語版では「Today, I am…」に当たる言葉となっており、日本語版に近いタイトルですね!ちなみにイタリア語版は「気持ち・感情」に対応する言葉がストレートにそのまま題名になっていました。絵本の翻訳版が出版される時、このようにタイトル自体が変わっていることがありますが、どのようにして決められるのでしょうか!?

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